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炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のリサイクル技術を開発

【産技助成Vol.96】
平成21年3月5日
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
静岡大学工学部物質工学科
【新規発表事項】
  NEDO技術開発機構の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、静岡大学工学部物質工学科の岡島 いづみ助教は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)をリサイクルするための基盤技術を開発しました。超臨界アルコールを用いてCFRP中の熱硬化性樹脂を分解して炭素繊維とプラスチック部分をそれぞれ分離・回収し、更に回収後のプラスチック部分は樹脂として再利用する試みです。
 炭素繊維とプラスチックの複合材料であるCFRPは、強くて軽いといった利点から、これまでの金属に代わり、自動車の車体の軽量化による燃費向上のための新規材料として大いに注目されています。しかし現時点では、CFRPにはリサイクルが困難な熱硬化性樹脂が使用されていることから、今後、CFRPを広く使用するためには新規のリサイクル技術の開発が不可欠です。今回開発した超臨界アルコールによるCFRPのリサイクル技術は炭素繊維を無傷で回収できると共に、もう一方の構成物の熱硬化性プラスチック部分もプラスチックとして再利用可能というリサイクル技術であり、今後の実用化が大いに期待されます。
 今後、ベンチプラントを用いた実証試験、実用プロセスの設計、回収した樹脂や炭素繊維の有効利用法の確立を目指し、民間企業との意見交換や共同開発を行っていく予定です。

図1 超臨界アルコールを用いたCFRPリサイクルのフロー図

図1 超臨界アルコールを用いたCFRPリサイクルのフロー図

1.研究背景

 炭素繊維とプラスチックの複合材料であるCFRPは、強くて軽いといった利点から、飛行機、宇宙機器、ゴルフシャフト、釣竿等の広い分野で使用されています。最近、自動車の車体の軽量化による燃費向上のために、これまでの金属に代わる新規材料として注目されています。しかしCFRPには加熱すると硬化してしまうという、再利用が困難な熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)が使用されています。CFRPの需要は年々増加の傾向にある一方で、微生物により自然分解されず、適当なリサイクル技術がないプラスチック製品の使用量の増大は廃棄物量の増大に直結します。今後、CFRPを広く使用するためにはリサイクル技術の開発が不可欠です。更にCFRP中の炭素繊維は比較的高価な材料です。炭素繊維を回収して再利用することは資源の節約のみならず、CFRPのコストの低減に寄与します。
 そこで静岡大学工学部物質工学科では、超臨界アルコールを用いてCFRP中の熱硬化性樹脂の架橋点を選択的に分解し、アルコールに可溶な状態に変換することで、炭素繊維とプラスチック部分をそれぞれ分離・回収する技術、更に回収後のプラスチック部分はアルコールを除去して再成形した後、硬化剤を加えて再度熱硬化性樹脂に戻す技術を開発しました。この技術は、高価な炭素繊維を付着物がなく無傷で回収できると共に、もう一方の構成物のプラスチック部分もプラスチックとして再利用が可能なリサイクル技術です。本技術では分解溶媒として沸点の低いアルコールを使用するため、分解後、樹脂を回収からアルコールを容易に除去できます。また分解する際に触媒を使用しないため、回収した樹脂に触媒が残留する恐れが無く、樹脂の再成形や再硬化への悪影響がありません。

2. 競合技術への強み

 本技術には次のような特徴があります。
  1. 無触媒反応
    触媒を一切使わない反応のため、回収したプラスチック成分に触媒が残留し、後の再硬化時に悪影響を与えるといった心配がありません。また触媒が不要なので全体の処理コストが下がります。
  2. プラスチック部分を回収して再利用可能
    プラスチック部分の架橋点を分解してアルコールに溶解して回収し、その後再成形して熱硬化性樹脂として再利用が可能です。従来の熱硬化性樹脂の処理法のように、プラスチックを焼却したり熱分解せずにプラスチックとして再利用することから、CO2の生成量を大幅に抑えることができます。
  3. 付着物の無い炭素繊維を回収可能
    プラスチック部分はアルコールに可溶なため、付着物の全くない炭素繊維を回収することができます。また処理温度も低いため、強度低下がありません。

表1 CFRPリサイクルの従来技術と本技術との比較表
種類温度・圧力溶媒触媒炭素繊維以外の
回収物
超臨界流体法
(本技術)

250~350℃
5~10MPa

低沸点アルコール
(低コストで回収が容易)

不要

硬化前熱効果樹脂
(再利用可)
常圧溶解法
100~200℃
0.1MPa

高沸点アルコール
(比較的高価)

必要

プレポリマー
(回収・再利用の実証なし)
熱分解法
400℃
0.1MPa

無し

不要

ガス、油
(有効利用できる性状か不明)

3. 今後の展望

 今後、処理条件の緩和を含む反応の最適化を行い、スケールアップに必要なデータの取得、実用装置の設計、回収した樹脂や炭素繊維の有効な利用法の確立、当該技術の経済性、環境適応性の評価を行い、民間企業と実用化を目指して共同開発を行っていく予定です。将来的にはベンチプラントを製作し、実プロセスに近い状態での実証研究を行う予定です。

4.その他

  1. 研究者の略歴
    1997年室蘭工業大学工学部応用化学科卒業、1997~1998年北海道リサイクル環境開発㈱ 研究員、1998~2000年通商産業省工業技術院物質工学工業技術研究所 特別技術補助職員、2000~2006年長崎菱電テクニカ㈱ 研究員、2005年静岡大学大学院理工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)取得、2006~2007年静岡大学イノベーション共同研究センター 研究員、2007年~静岡大学工学部物質工学科 助教

  2. 受賞
    • 平成18年度日本エネルギー学会発表奨励賞(平成18年)
    • プラスチック化学リサイクル研究会第9回討論会 発表賞(ポスター)(平成18年)
    • 静岡大学 学長表彰 (平成17年)
    • 静岡県しずおか新エネルギー大賞 アイデア部門 審査員特別賞(平成16年)
    • プラスチック化学リサイクル研究会第7回討論会 ポスター発表賞(平成16年)
    • 化学工学会四日市大会 最優秀ポスター賞(平成14年)

5.問い合わせ先

  1. 技術内容について
    静岡大学工学部物質工学科 助教 岡島いづみ
    TEL&FAX: 053-478-1165
    メールアドレス
    研究内容:静岡大学工学部物質工学科 佐古・岡島研究室

  2. 制度内容について
    NEDO技術開発機構 研究開発推進部 若手研究グラントグループ
    村上、松崎、千田、長崎
    TEL:044-520-5174 FAX:044-520-5178
    個別事業HP:産業技術研究助成事業(若手研究グラント)