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強靱かつ柔軟で耐薬品性に優れたバイオプラスチック合成技術を開拓

2009年11月12日

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
福井県立大学 生物資源学部


 NEDOの産業技術研究助成事業の一環として、福井県立大学 生物資源学部の濱野吉十講師は、天然の微生物からバイオプラスチックの生産につながるε-ポリリジン(図1)の合成酵素(Pls)を取り出すことに成功しました。この酵素は、強靱かつ柔軟で耐薬品性に優れるポリアミド゙系バイオプラスチック(注1)の合成のみならず、多種多様な機能性バイオプラスチックの創製が可能となり、ライフサイエンス、化学工業分野への応用が期待できる技術です。

図1 ε-ポリリジン(ε-PL)の化学構造
図1 ε-ポリリジン(ε-PL)の化学構造
ε-PLは、25個~35個のリジンがペプチド結合(アミノ酸同士が脱水縮合して形成される結合)によってつながった化合物。

  • (注1)バイオプラスチックは、ポリ乳酸などのポリエステル系とポリアミド11などのポリアミド系の2種類に大別され、一般的に後者の方が強靱かつ柔軟で耐薬品性に優れている。


1. 背景及び研究概要

 ポリエステル系バイオプラスチックは、ポリ乳酸(注2)に代表されるように、微生物によるポリマー化の技術が確立されつつあります。その一方で、ポリアミド系バイオプラスチック(化学合成ではナイロンが広く普及しています)は強靱かつ柔軟で耐薬品性に優れていますが、天然由来による開発は未開拓のままです。
 この様な背景の下、福井県立大学は、天然の微生物(放線菌Streptomyces albulus)がナイロンの構造に似たε-PLを合成することに着目し、ポリアミド系プラスチックの微生物生産につながるε-PL合成酵素(Pls)を見出すことに成功しました(図2)。現在、Plsはポリアミド系バイオプラスチックの微生物合成の可能性を有している“唯一の酵素”であるといえます。 単一酵素であり小型でもあるPlsは、その機能改変が比較的容易であるため、バイオテクノロジー技術の適用がしやすいのも特徴の一つです。バイオプラスチック材料の創出に理想的な微生物酵素ツールとして、ライフサイエンスや繊維、化学工業分野など様々な業界での応用が期待されます。

  • (注2)ポリ乳酸とは、乳酸がエステル結合(グリセロールと脂肪酸から水がとれて結合したもの)によって重合し、長くつながった高分子のこと。

図2 e-ポリリジン酵素の抽出概念図
図2 e-ポリリジン酵素の抽出概念図
アミノ酸L-リジンのポリマー化を触媒し、ナイロン6の化学構造に類似したε-PLを生産します。

2. 競合技術への強み

この技術には、次のような強みがあります。
  1. 強靭かつ柔軟なポリアミド系バイオプラスチックの微生物生産が可能
  2. Plsはポリアミド系バイオプラスチックを合成できる可能性を持つ唯一の酵素
  3. Plsは機能改変が容易(バイオテクノロジー技術の適用がしやすい)

表1.本技術と従来手法との比較表
  バイオプラスチック 化学合成プラスチック
ポリアミド系 ポリエステル系 ポリアミド系
今回の技術 代表例:ポリ乳酸 代表例:ナイロン
環境負荷 ◎天然由来◎天然由来×石油由来による合成。 不要になった際も自然には還元しない
強靭性・
柔軟性
◎一般的に、強度が高い△ポリ乳酸は強度に劣るため適用範囲が狭い。 しかし、生分解性に優れる◎強度が高く、加工性も良い
◎低コスト
備考現在、ポリアミド系バイオプラスチックを微生物合成できる可能性のある唯一の手法モノマー材料である乳酸は微生物発酵で調製可能であるが、ポリマー化は有機合成的に行われる 

3. 今後の展望

 石油に依存しない環境に調和した新しい素材としてバイオプラスチックへの期待が年々増してきているなかで、天然由来で、強靱かつ柔軟で耐油性や耐薬品性に優れるポリアミド系バイオプラスチックを創製することは産業界に大きな貢献をもたらすものと考えています。バイオプラスチックのさらなる新規創製技術の開拓にチャレンジしたいと考えています。
 福井県立大学では、今後、以下の課題に対し、プラスチックの開発や製造、周辺技術に知見や実績を持つ企業・組織などとの意見交換や共同開発を提案します。新しくバイオプラスチックの開発・生産に関わることに興味を抱いている企業・組織からのコンタクトも歓迎します。

  1. “長鎖(100mer以上)”のε-PLを合成できる改良型Plsの構築(100mer以上のε-PLはバイオプラスチックの材料になり得る)
  2. L-リジン以外のアミノ酸をポリマー化できる改良型Plsの構築

4. 研究者 濱野吉十(はまのよしみつ)講師の略歴

2002年 富山県立大学大学院工学研究科生物工学専攻博士後期過程修了
2002年 アリゾナ大学博士研究員
2003年 福井県立大学生物資源学部助手
2008年~福井県立大学生物資源学部生物資源学科講師

5. お問い合わせ先

<本プレス発表の内容についての問い合わせ先>
福井県立大学 生物資源学部 講師 濱野吉十
TEL 0776-61-6000(代)  FAX 0776-61-6015
研究室HP:福井県立大学・生物資源学部・生物資源学科
メールアドレス

<NEDO制度内容についての一般的な問い合せ先>
NEDO 研究開発推進部 若手研究グラントグループ 岸本、松崎、千田、長崎
TEL 044-520-5174  FAX 044-520-5178
個別事業HP:産業技術研究助成事業(若手研究グラント)

<その他NEDO事業についての一般的な問合せ先>
NEDO 広報室 坂本、萬木(ゆるぎ)、田窪
TEL 044-520-5151

6. 参考

参考詳細説明資料(PPT)サイト

※詳細説明資料(PPT)についてはNEDOより業務委託しているテクノアソシエーツが運営管理する「技術&事業インキュベーション・フォーラム」の問い合わせフォームからダウンロードすることができます。