本文へジャンプ

タンパク質の機能を光で制御する汎用的な技術の開発に成功

―医薬品候補物質の探索法としての応用を可能に―
2010年2月18日

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人東京大学

  NEDOの産業技術研究助成事業の一環として、東京大学大学院薬学系研究科特任准教授  加藤  大らは、ゲルを用いて安定に保存したタンパク質が機能を発現する“場所”、“時間”、“強さ”を光によって制御する技術を開発しました。この技術により、タンパク質をはじめとする、様々な物質の機能を光で制御することが可能になります。
  この技術を用いて、メタボリックシンドロームに関連する動脈硬化症の疾患タンパク質を固定化し、光照射前後で疾患タンパク質の濃度を変化させて健常状態/疾患状態のモデルを創り出すことに成功し、それに対応した医薬品の候補物質の探索が可能であることを示しました。この技術開発により、今後の医薬品開発の迅速化が期待されます。
  この成果は、2月15日付のアメリカ化学会の科学雑誌アナリティカルケミストリー(注1)(電子版)にAccelerated Article(注2)として掲載されました。

図1. 光によるタンパク質の機能制御の模式図
図1. 光によるタンパク質の機能制御の模式図

  • (注1)分析化学分野の専門誌で国際的に第1位の学術誌(Impact Factor= 5.712)
  • (注2)Accelerated Articleとして選ばれるのは、全掲載論文の3%程度

1. 背景

  タンパク質は、生体内での情報伝達や反応を司り、生命活動の維持に必要不可欠な物質です。またその優れた選択性やエネルギー効率から、医療、工業製品の生産、有害物質の処理など社会の様々な分野で利用されています。しかし、タンパク質は機能制御が困難で壊れ易いという問題があり、これが解決されれば、さらに多くの分野で利用できると期待されています。すでにタンパク質の機能制御法として、タンパク質が機能を発現する際に必要な部位を修飾する手法などが報告されていましたが、実現するには目的のタンパク質ごとに精密に設計し作製する必要があり、その調製が非常に難しい等の問題がありました。今回開発に取り組んだ技術は、外部からの光信号でタンパク質の機能を制御し、「必要な時に」、「必要な場所で」、「必要な強度の」機能を発現させるもので、非常に重要な開発課題です。

2. 研究成果概要および本成果の意義

  融合新興分野である「ナノバイオ」の先進的な研究により、光によるタンパク質の機能制御法を開発しました(特許出願済み)。この技術は、性質の異なった様々なタンパク質の機能制御が可能な手法です (Analytical Chemistry誌 (Advance Online Publication 2010年2月15日、冊子版2010年3月1日予定))。タンパク質を、新たに開発した光開裂性ゲルに閉じ込めることで、安定に保存し、必要な時に光照射することで閉じ込められていたタンパク質が放出され、機能を発現するシステムを構築しました。
  この技術を用いて、メタボリックシンドロームに関連する動脈硬化症の疾患タンパク質(PCSK9)を固定化し、光で疾患タンパク質の放出を制御することに成功しました。光照射前を健常モデル、光照射後を疾患モデルと見なして、光照射前後の濃度変化を測定することで医薬品の候補物質の探索が可能であることを示すことが出来ました。このモデルにおけるタンパク質濃度変化に対応した物質探索を行うことで医薬品候補物質の探索が飛躍的に進む可能性があります。
  さらに医薬品探索にとどまらず、タンパク質は、産業、医療など様々な分野で利用されていることから、この研究の成果はインパクトが大きく、特に、バイオテクノロジー分野への波及効果が非常に大きなものと考えられます。

3. 今後の展望

タンパク質等の機能性物質の機能を時空間制御した新規な工業製品、医療技術の開発に取り組んでいきます。

4. お問い合わせ先

(本プレス発表の内容についての問い合わせ先)
東京大学大学院薬学系研究科
加藤 大 (Masaru KATO)
TEL:03-5841-1840


(NEDO制度内容についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 研究開発推進部
松村、松崎、千田
TEL: 044-520-5174

(その他NEDO事業についての一般的な問合せ先)
NEDO  広報室
萬木(ゆるぎ)、田窪
TEL  044-520-5151