本文へジャンプ

金属型単層カーボンナノチューブバッキーペーパー(BlueMetal)の製品化

単層カーボンナノチューブの透明導電膜への応用研究を促進
2009年2月12日

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
株式会社 名城ナノカーボン

 NEDO技術開発機構の産業技術研究助成事業の一環として、独立行政法人 産業技術総合研究所 柳 和宏 研究員は、金属型単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の製品化につながる大量分離精製技術を確立し(図1)、その技術を名城ナノカーボン社へ移転しました。同社はこのたび、SWCNTの透明導電膜応用に重要となる金属型SWCNTバッキーペーパー(BlueMetal™)を製造・販売します。
 本製品は、SWCNTの導電膜応用において、性能劣化の原因である半導体的性質を示す半導体型SWCNTをほぼ完全に除去した試料となっています(金属型SWCNT純度:95%以上、直径:約1.4nm)。また、バッキーペーパー(紙状)試料であるため、研究開発における加工が極めて容易です。本製品により、高純度金属型SWCNT試料を用いた研究開発が可能となり、透明導電膜応用に向けたSWCNT研究開発が促進されることが見込まれます。
 実際の金属型SWCNTバッキーペーパー試料及びその水分散液は、2009年2月18日から開催されるnano tech 2009(東京ビッグサイト)において名城ナノカーボン社のブースにて展示されます。


図1.(左)製造された金属型SWCNTバッキーペーパー(BlueMetal™)。
図1.(左)製造された金属型SWCNTバッキーペーパー(BlueMetal™)。
(右)界面活性剤を用いて分散した金属型SWCNT分散水溶液(1リットル溶液)。


1.開発の背景

  SWCNTはグラフェンシート(グラファイトの1層)をまるめた直径1nm程のチューブ状の物質です。そのグラフェンシートの巻き方により、SWCNTの電子構造は大きく変化し、半導体型や金属型の性質を示します。金属型のSWCNTは高い導電性を持つため、ITOに代わる透明導電膜への応用が期待されています。しかしながら、SWCNTの製造時には、様々な巻き方のSWCNTが合成されてしまい、金属型と相反する性質をもつ半導体型SWCNTも同時に試料に含まれています。通常の合成手法の場合、半導体型が金属型より約2倍程度も多く含まれてしまう状況です。半導体型SWCNTが含まれると、導電率の低下や環境変化に伴う劣化を招いてしまいます。よって、半導体型SWCNTが含まれたままでは、透明導電膜への応用が困難な状況でした。半導体型を除去した高純度の金属型SWCNT試料が必要ですが、そのような金属型SWCNTは一般に入手困難であったため、技術開発の障害となっていました。
 その状況を解決するため、産業技術総合研究所 柳 和宏 研究員は、NEDO技術開発機構の平成19年度産業技術研究助成事業「塗布型デバイス構築用単一電子構造カーボンナノチューブ凝集体の開発」を受け、金属型SWCNTの製品開発研究を押し進め、SWCNTの分離精製技術を名城ナノカーボン社へ技術移転し、半導体型SWCNTを除去した高純度金属型SWCNTバッキーペーパー(金属型SWCNT純度95%以上)の製品化を行いました。製品化における製造装置の開発には、財団法人科学技術交流財団の平成20年度愛知ナノテクものづくりクラスター成果活用促進事業「次世代型プリントエレクトロニクスへ向けたカーボンナノチューブ分散液の開発」の支援も受けました。また、産業技術総合研究所 片浦 弘道 グループリーダー、日立工機株式会社からも技術支援を受けています。

2.本製品の強み

  1. 極めて高い金属型SWCNT含有量
    未精製のSWCNT試料の場合、金属型SWCNTは試料の中に約30%程度しか含まれておりません。光吸収分光測定によって本製品の純度を見積もった場合、本製品の金属型SWCNT含有量は95%以上となっています(図2)。金属型と半導体型が混在したSWCNT試料の水分散液は黒色を示しますが、このような高純度金属型SWCNT(直径約1.4nm)のものは青緑色(図1、図2)を示します。
    図2.(左)BlueMetal™と未精製試料の光吸収スペクトルの構造。半導体型SWCNT由来の吸収ピークは1000nm付近に、金属型SWCNT由来の吸収ピークは700nm付近に存在します。未精製のものは両ピークが存在しますが、BlueMetal™には金属型のものしか確認できません。(右)BlueMetal™と未精製SWCNTの溶液の写真。金属型SWCNT純度が極めて高いため、BlueMetal™の色は青緑色を示します。
    図2.(左)BlueMetal™と未精製試料の光吸収スペクトルの構造。。半導体型SWCNT由来の吸収ピークは1000 nm付近に、金属型SWCNT由来の吸収ピークは700 nm付近に存在します。未精製のものは両ピークが存在しますが、BlueMetal™には金属型のものしか確認できません。
    (右)BlueMetal™と未精製SWCNTの溶液の写真。金属型SWCNT純度が極めて高いため、BlueMetal™の色は青緑色を示します。
  2. バッキーペーパー試料
    SWCNT試料が粉末・溶液状である場合は、その取扱いや不純物の除去に注意を要し、目的とする用途への加工に手間がかかってしまいます。バッキーペーパー試料はそのような問題は無く、様々な用途に簡単に利用可能です。しかしながら、バッキーペーパー試料を得るためには、大量かつ高純度のSWCNT試料が必要とされていました。当製品開発ではそのような技術課題を克服し、金属型SWCNTのバッキーペーパー試料の製品化に成功しました。
    表1.従来市販されているSWCNT試料との比較
     金属型SWCNT含有率
    BlueMetal™◎ 95%以上
    未精製SWCNT(従来試料)△ 約30%

3.今後の展望

 本製品は、透明導電膜へのSWCNT応用研究の促進に向けた、金属型SWCNTバッキーペーパー試料です。今後は、このような金属型SWCNT試料製造の低コスト化と同時に、SWCNT透明導電膜形成に適した試料開発を行っていきます。

4.問い合わせ先

<技術内容について>
独立行政法人 産業技術総合研究所 ナノテクノロジー研究部門 研究員 柳 和宏
TEL:029-861-3132、FAX:029-861-2786
E-mail:k-yanagi@aist.go.jp

<金属型SWCNTバッキーペーパーについて>
株式会社名城ナノカーボン
TEL:052-971-2408、FAX:052-955-3257
E-mail:hashimoto@ccmfs.meijo-u.ac.jp

<制度内容について>
NEDO技術開発機構 研究開発推進部 若手研究グラントグループ
高崎 幸一、松崎 肇、千田 和也
TEL:044-520-5174 FAX:044-520-5178
産業技術研究助成事業(若手研究グラント)