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近接場光による全光ナノスイッチの室温動作に成功

―世界初、消費電力1万分の1の素子実現に向け前進―
2010年8月24日

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
財団法人光産業技術振興協会
国立大学法人 東京大学

  NEDOは、財団法人光産業技術振興協会(OITDA※1)、東京大学とともに、近接場光※2と呼ばれるナノ寸法物質間の相互作用を媒介する光を用いた新機能部材の開発を進め、今回、光で動作する論理回路の室温動作(300K)に世界で初めて成功しました。本技術は近接場光のエネルギー移動を用いたもので、従来の電子デバイスをこの技術によって光デバイスへ置き換えることで、1/10,000の超低消費電力の素子を実現できるようになり、エネルギー消費量の削減に大きく貢献します。
 この成果は9月に長崎大学で開催される秋季応用物理学会で報告される予定です。


  • (※1)財団法人光産業振興協会(OITDA):
    光技術・光産業の調査研究、技術開発の推進団体。現在、118社の賛助会員で構成されている。今回の成果はコニカミノルタオプト、東芝、パイオニアと東京大学が集中研方式でNEDO委託事業「低損失オプティカル新機能部材技術開発」において開発した。
  • (※2)近接場光:
    光の波長に比べて小さい粒子に光を当てた場合、粒子により散乱される散乱光と共に、その粒子表面に発生する薄い光の膜を指す。近接場光は、伝搬光と異なり、遠くへ伝搬することなく、粒子表面に局在するエネルギーと捉えることができる。

1.背景

 現在の電子回路では大きなエネルギーロス(発熱)があり、省エネルギー化が求められています。そこで、消費電力が低く波長以下のサイズへ小型化を実現できる、近接場光を用いたナノスイッチの実現が期待されていましたが、動作温度が7K(-266℃)と低く、広く情報・通信機器に搭載するには室温で動作する技術の開発が必要でした。

2.成果の特徴

 従来の量子ドット ※1デバイスでは108~109個にのぼる多数の量子ドットからなる寸法100マイクロメートル程度の集合体の特性を用いていました。これに対して本技術では2個の量子ドットの形状、構成と、その近接場光の振る舞いを物理原理に基づいて設計し、これを2個の量子ドットの垂直位置制御、低温埋め込み制御等の革新的な製造プロセスで作製することにより、寸法50ナノメートル以下で室温動作(300K※2)するデバイスを開発しました。これにより、近接場光で動作する全光型回路を、2020年ごろまでに実用化する目途が立ちました。

3.今後の展望

 この技術を発展させて、全光型回路の開発を行い、1/10,000の超低消費電力素子を実現します。全光型回路はCPU、サーバー、ルーターなどの情報通信機器で、従来技術では到達できなかった高性能化と省エネ化を実現します。さらに、近接場光の応用技術として、高速画像フィルタや赤外イメージングデバイスなどの展開も期待されます。
 なお、来年度から特定非営利活動法人 ナノフォトニクス工学推進機構が本事業で開発した全光ナノスイッチの評価サンプル提供を開始します。

4.お問い合わせ先

(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 佐藤(丈)、木村
TEL:044-520-5210 FAX:044-520-5212
E-mail:denshi-daihyou@nedo.go.jp

(プレス発表/取材に関する問い合わせ先)
NEDO 広報室 田窪、廣瀬  TEL:044-520-5151

(評価サンプル提供に関する問い合わせ先)
特定非営利活動法人 ナノフォトニクス工学推進機構
TEL:03-3267-6790 FAX:03-5261-9788

[用語解説]

  • ※1) 量子ドット:
    主に半導体分野において、微細加工、結晶成長により作製されたナノ構造体を示す。ナノサイズの効果により、その領域に閉じこめられた電子は離散的なエネルギー準位を示す。ガリウムヒ素上に成長させたインジウムヒ素の量子ドットは、次世代の電子・光学材料として有望である。
  • ※2) 300K:
    絶対温度300度を示す。摂氏換算すると約27℃に当たり、室温を表す単語として用いられることが多い。